奥様劇場
面の木物語
作 keiko 写真 ラノ

すべてはこの場所から始まった。
週末になると、いつもここにいた。
眠りから覚めた木の芽が芽吹いて、葉が茂り、花開く季節は、2人を包んで流れていった。

ブナ林の黄葉は、落ち着いた熟年の2人の心にしっくり馴染んだ。
落ち葉を踏みしめながら ゆっくりと歩き出す・・・
「今日は、寒くてカイロがいるわね♪」
「2人で歩いてれば 僕は、指先まで温かいよ」

男の足どりはいつもと違った。
女にも解っていた・・・今日が終わってしまったら、その次の季節まで・・・

2人は心を閉じ込めた。
ブナの林がそんな2人の思い出をふわふわのクッションで覆った。
暖かな春になったら、また芽吹いてくるように。